なるテックのメンバーの集合写真(なるテック提供)


 秋田県内でも屈指の学力を誇ることで有名な雄勝郡東成瀬村で、移住者や関係人口の受け入れが広がっています。そこで大きな役割を果たしているのが、東成瀬テックソリューションズ株式会社(以下、なるテック)です。

 外部から来た人材が地域をどのように変えているのでしょうか。「スマートビレッジ事業」を中心に、なるテックの事業内容から、東成瀬村の魅力、関係人口を活用した地域作りの構想に迫ります。

「メンバーの殆どは、東成瀬村を知りませんでした」創業から2年間で46人にまで拡大した地域のIT企業“なるテック”

 

 なるテックは、秋田県東成瀬村が出資する第三セクター方式の地域発のITベンチャー企業です。「社会課題をテクノロジーで解決する」を経営目的に、2021年10月に設立されました。代表を務める近藤純光(じゅんき)さん(34)は、「未経験者を高度IT人材に育成し、都心の仕事を受注し成長することで、都市部から地方への人口の流れを作りたい」とヴィジョンを語ります。

 なるテックには、2023年10月現在46名のメンバーが集っています。メンバーの多くは、地域おこし協力隊の制度を活用する若者です。メンバーの中には、東成瀬村に縁がなかった人も多くおり、未経験の分野、見知らぬ地域で新たなチャレンジに踏み出しています。今回お話を伺った、スマートビレッジ事業部長の塩田拓生(ひろき)さん(23)もその一人です。


「ローカルで生きることを志す人に活躍する場を備える」スマートビレッジ事業部長を務める23歳の挑戦



 塩田さんは、新潟県の阿賀野市に生まれました。「地元は好きだったけど、当時は地元で稼ぐイメージが湧かなかった」という理由から、高校卒業後は東京の大学に進学します。大学ではラクロスに打ち込み、部活では副主将を務めました。部活で学んだ「同じ目的の元にチームをまとめ上げていく経験」を武器に、卒業後はIT系の販売代理店に就職しますが、直後に大病を患い倒れてしまいます。その後、塩田さんは自身のキャリアや人生を見つめ直すようになりました。「何で自分は東京に出てきたんだろう?地元が好きなはずなのに、どうして地元に残らなかったのか?」と、自問自答する日々が続きました。

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「新しいことに挑戦したい」と始めたラクロス。写真中央が塩田さん(塩田さん提供)


 数カ月して、塩田さんは「自分自身の力で地元のみならず、日本中の地方を活性化していきたい。東京ではなく地方を志す人に、地方で活躍する場を用意したい。そのための仕組みを作りたい」という、自身が本当にやりたかったことに気付きます。その後、IT×地方創生というキーワードで新たに就職活動を始めた塩田さんは、なるテック代表の近藤さんに出会います。「近藤さんは、今まであったことがない人、とにかく明るかったんです。その瞬間に、是非この人と一緒に働きたいなと思いました」と、近藤さんの第一印象について語る塩田さん。なんと一ヶ月後には「一度も行ったことがない」という東成瀬村に移住してしまいます。


関係人口から移住者まで。外から来た人に温かく、オープンな東成瀬村。学力が全国トップクラスの秘訣はここにあり



 最初は不安もあったと言う塩田さんですが、今では村の良さを深く理解する一人です。「人口は2400人で、コンビニも一つしかない小さな村ですが、自然が豊か・緑が豊富で見たことないような星空が見えるところが本当に素晴らしいと思います」と、恵まれた自然環境が魅力の第一に挙げられました。


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東京では絶対に見ることができない星空が魅力の東成瀬村(塩田さん提供)


 加えて、「とにかく、地域住民の方が優しいんです。外から来た人に対してオープンで、人を放っておかない、一人にしないというところが村民性としてあると感じます。新しいことにも積極的で、関係人口や移住者など、新しい人が村に来ることに対しても肯定的に受け止めてくれる人が多いです。他の地域では第三セクターのIT企業といった事例はまず見られません」と、地域の人達の人柄やオープンさが魅力に挙げられました。「小中学校の学力が日本で一位になるところも、こういう人の良さ、地域の繋がりの強さが影響しているように思います」と塩田さんは続けます。

 このように、多様な魅力があり、新たにチャレンジする移住者や関係人口には嬉しい地域でもありますが、地方ならではの課題も村には山積しています。その地域課題・社会課題をITによって解決するのが、なるテックのスマートビレッジ事業なのです。


「小学生も一緒に!」村総出で挑戦する前例なき課題解決。なるテックの“スマートビレッジ事業”



 塩田さんは、スマートビレッジの事業部長に抜擢され、東成瀬村役場の各課や社内のメンバーと連携しながら多様な課題の解決に取り組んでいます。取り扱う課題は、生産加工領域、観光・レジャー領域、教育・福祉領域、生活様式……と多岐にわたります。まずは東成瀬村の課題解決で成功事例を作り、横展開していくことで、日本中の地域課題の解決を目指していきます。


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東成瀬中学校でのICT教育の出前講座の様子(なるテック提供)


 中でも、特に力を入れているのが、ICT教育の出前講座や体験型のキャリア教育支援に代表される教育分野の取り組みです。小学生向けのキャリア教育支援では、なるテックのメンバーや東成瀬村役場の関係者のサポートを受けながら、生徒達が自ら村の課題解決を推進しています。具体的な取り組みについて尋ねると「高齢者の交通の問題や、買い物施設の不足、村の情報発信の不足といった課題の原因を考え、優先順位をつけながらアクションを実行しています」と塩田さん。

 このように、キャリア教育支援を入り口に、村の多様な課題解決を図っていくことが地域の活性化に繋がっており、東成瀬村の取り組みが、湯沢高校など、近隣の高校でケーススタディとして取り入れられています。こうして、東成瀬村の地域課題解決のモデルが村の外に広がり始めているのです。


「雪下ろし」「課題解決のアイディア出し・壁打ち」関係人口の関わりしろ



 また、東成瀬村の地域課題の解決に、関係人口を活用する動きも進んでいます。
 塩田さんは「なるテックは元々IT企業なので、冬場の大きな課題である雪下ろしや地域の交通の問題、特産品の商品開発といった分野に関する専門知識は十分とは言えない状況です。そのような人材を地域の中だけで解決するのは難しいので、地域外の専門家の方々が関われるコミュニティやプラットフォームを構築する必要があると思っています」と、地域の人材不足の課題を挙げています。塩田さんは、これらの課題の解決に「是非とも関係人口として関わってくれる方の力をお借りしたい」と続けました。



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「東成瀬村に第二の故郷として関わる人の存在が地域を変える」と語る塩田さん(なるテック提供)


 関係人口として関わってくれる人に、村としてどのような価値を提供できるのでしょうか。塩田さんは、「自然の豊かさ、人の温かさに癒されて欲しいという思いもありますが、関係人口としての関わりを通して、東成瀬村を第二の故郷として思ってもらえるということが一番大きいと思います」と太鼓判を押します。

 先に村の魅力として挙げたように、東成瀬村は非常にオープンな地域で、関わりしろや、活躍の機会も豊富です。ITと地域の課題解決という領域で新たな挑戦をしたい方はもちろん、第二の故郷を新たに持ちたい方にも持って来いの地域であると言えるでしょう。さらには、2年間で46名のチームへと成長したなるテックの存在を通じて、東成瀬村は若い人が関わりを持ちやすくなったことは間違いありません。是非、この機会に自身の専門分野を活かして、東成瀬村と関わりを持ってみてはいかがでしょうか。

<関わりしろ>
・スマートビレッジ事業に関わるプロジェクトに関するアドバイザリ
・地域外の人が関わるコミュニティプラットフォーム創出に向けた壁打ち
・冬場の雪下ろしや、地域の自然環境整備

<連絡先>
東成瀬テックソリューションズ株式会社
〒019-0801
秋田県雄勝郡東成瀬村田子内仙人下30−1
東成瀬村山村開発センター内



この記事に関するお問い合わせ

  • 秋田県 あきた未来創造部 地域づくり推進課 調整・地域活性化班
  • 〒010-8570 秋田県 秋田市 山王4丁目1-1
  • Tel:018-860-1237 Fax:018-860-3875

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