成瀬ダム祭りの様子。悪天候の予報であったが、雨は昼過ぎまで降らず、多くの人が訪れた【筆者撮影】

 秋田県では、地域の方々と関係人口が交流する活動(関わりしろ)を「あきたの物語」と名付け紹介しています。令和6年度は、本プロジェクトの一環として、美郷町の「ほとり食堂」と東成瀬村の「東成瀬テックソリューションズ株式会社(以下、なるテック)」の2団体がモデル地域として選定され、現地での交流イベント、首都圏関係人口との交流拠点アキタコアベース(東京都中央区)でイベントを実施し、関係人口の創出・拡大を行いました。

美郷町「ほとり食堂」。地域の若者がイキイキとしている姿に感動

​ 秋田県美郷町は、仙北郡に位置する人口約1万8千人の町で、環境省選定名水百選に選ばれた「六郷湧水群」をはじめ、豊かな自然に恵まれています。

 この美郷町で活動する「ほとり食堂」は、子ども食堂として、地域の子どもたちと大人が、昔各地域で行われていた子ども会のような形で交流できる場を提供しています。​毎月第3土曜日に町内の3地域(千畑・仙南・六郷)を巡回しながら開催されており、地元の食材を使った食事の提供や、共食を通じた食育活動、地域の事業者と連携したキャリア教育などを行っています。 ​また、SNSを活用して活動内容を広く発信し、地域全体で子どもたちを支える取り組みを推進しています。

アキタコアベースイベント:「地域の食を子どもと学ぶほとり食堂」

 
 2024年9月19日(木)に開催されたアキタコアベースでのイベントには、美郷町の関係者やメディア記者など、首都圏から7名が参加しました。ほとり食堂を運営するウォランタスみさと代表の阿部大地さんと、スタッフの佐藤智哉さんが、地域コミュニティとしての役割や、これまでの活動事例、メディア掲載事例などを紹介しました。その後、参加者が関係人口として関わるための具体的なアイデアについてディスカッションを行い、地理的な制約を超えた交流・連携の可能性を模索しました。

美郷町のことは「初めて知った」という参加者も【筆者撮影】

 参加者からは、「あきコネの投稿をFacebookで見て、久しぶりに美郷町の様子を見てうれしくなりました。地域の若者がイキイキと活動している姿に感動しました。プロジェクトが成功することを祈っています。今後も応援団として関わっていきたいです」との声が聞かれ、関係人口の拡大の手応えを感じられる時間となりました。

現地交流イベント:スポーツ鬼ごっこ・モルック大会


 2024年11月16日(土)に開催された現地交流イベントには、県内や首都圏から10名の参加者が訪れ、地域の子どもたちやスタッフと親睦を深めました。
イベントは「あきたの物語」との特別コラボとして開催され、スポーツ鬼ごっこや、モルックを楽しみながら、地域の子どもたちとともに調理し、食を通じたコミュニケーションを体験しました。地元や近隣の農家から提供された食材を活用し、食育について学ぶ機会もありました。また食事をとりながら、スタッフと関係人口である参加者の間で今後の継続的な交流の可能性について議論が交わされる場面もありました。

初めてのスポーツ鬼ごっこ、モルックを楽しむ子どもたち【筆者撮影】


 横浜からの参加者は、「美郷町の地域の人の温かさや、子どもたちの活発さを感じられました。都市部の暮らしとは違った人とのつながりを感じられて楽しかったです」と話し、今後も美郷町との関わりを深めたいと語りました。


東成瀬村「なるテック」 。一人ひとりの動き出す力が集い、地域を変える。


 秋田県東成瀬村は、秋田県の最南端、栗駒国定公園がある奥羽山脈の麓に位置する自然豊かな村です。人口は約2400人で、小学校・中学校の「全国学力テスト」で日本トップクラスの成績を出し続けていることでも知られています。

 なるテックは、秋田県東成瀬村が出資する第三セクター方式の地域発のITベンチャー企業で、「日本の社会課題をテクノロジーで解決する」ことを目的に、2021年10月に設立され、約60名の社員が働いています。社員は、東成瀬村の「地域おこし協力隊」の委嘱を受けており、多くが元々東京など、都市部で暮らしていた移住者です。現在は教育や交通、観光など幅広い分野でITのソリューションを導入し、受託開発やDXのコンサルティング事業を展開しながら、東成瀬村の地域づくりを推進しています。

現地交流イベント:「成瀬ダムまつり」

 
 東成瀬村の現地交流イベントでは、2024年8月25日(日)に開催された成瀬ダムまつりのスタッフとして、13名の関係人口が参加し、なるテックのスタッフとともに祭りを盛り上げました。成瀬ダムの工事区域には、赤滝神社という神社があり、毎年行われていたお祭りは工事によって無くなってしまいました。そのことを受け東成瀬村の村民や、ダム工事関係者、東成瀬村商工会、実行委員のなるテックが事務局として、村全体が一体となって企画されたのが、成瀬ダム祭りです。今回参加した関係人口は、こどもえんにちコーナーを手伝い、ヨーヨー釣りや型抜き、的当てなどを通じ、地域の子どもたちとの親睦を深めました。
こどもえんにちコーナーの様子。なるテックのメンバーと一緒に祭りを盛り上げた【筆者撮影】

 参加者からは「お祭りに参加させていただく中で、ダムの完成だけがミッションなのではなく、ダムの建設を通じて、地元の村や企業、ジョイントベンチャーの企業が一体となり、地域全体の活性化に貢献していることを強く感じました。また来年も参加したいです」との声が聞かれ、東成瀬村のポテンシャルが地域内外に知られる契機となりました。

アキタコアベースイベント:東成瀬村座談会〜東京で感じる秋田の魅力

 2025年2月21日(金)にアキタコアベースで開催された「東成瀬村座談会〜東京で感じる秋田の魅力~」のゲストには、なるテックのコーポレート本部経営企画本部長代理の水澤敦史さんとakaulu事業責任者の永山和宏さんを招き、首都圏から集った3名の参加者と交流を図りました。

イベント終了後の集合写真、活発なディスカッションが行われた【地域づくり推進課提供】

 プレゼンテーションパートでは、水澤さん、永山さんから東成瀬村やなるテックの紹介とともに、自身がなるテックに関わることになったきっかけや、現在の事業内容、スキンケアについてお話をいただきました。その後、参加者と「地域色を生かしたスキンケア商品『akaulu』をどうやって展開するか?」「どうやったら秋田の稼ぐ仕組みを作っていけるか?」といったテーマについて積極的な意見交換がなされました。
参加者からは、「なるテックの皆さんの動き出すエネルギーがすごいと感じました。ずっと都会で暮らしてきた人が生活も仕事も変えるということは簡単ではないと思います。自分も刺激を受けました」との声が聞かれ、イベント参加が忘れられない経験となったことが伺えました。

関係人口との継続的な関わりへ。リアルな体験がつながる力に


 今回のモデル地域2団体のアキタコアベースイベントおよび現地交流イベントを通じて、関係人口との間に、新たな関係が築かれました。現地交流を通じたリアルな体験と対話、隣県や首都圏の関係人口が「自分ごと化」できるテーマの設定が、地域とのつながりを深める大きな要因となりました。また、それぞれのモデル地域事業でなされたオンラインイベントもカジュアルに関係性を深めるきっかけとなり、イベント参加が叶わないながらも、LINEグループなどを通じて地域の活動を応援する人の数も増えました。

 今後も、「あきたの物語」の取り組みを通じて、関係人口が地域に関わりやすい環境を整え、豊かな地域づくりに向けた新たな可能性を生み出していくことが期待されます。

この記事に関するお問い合わせ

  • 秋田県 あきた未来創造部 地域づくり推進課 調整・地域活性化班
  • 〒010-8570 秋田県 秋田市 山王4丁目1-1
  • Tel:018-860-1237 Fax:018-860-3875

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